Tsuji Laboratory

Department of Energy and Hydrocarbon Chemistry, Graduate School of Engineering, Kyoto University

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  Research Interest  
 

ナノサイズ配位子をもつ画期的な均一系触媒の開発

遷移金属を用いる均一系分子触媒反応では,金属を取り囲む配位子が重要な役割を演じます.この分子触媒の機能および効率を飛躍的に向上させるために,我々は分子触媒そのものにナノメートルサイズの大きな触媒環境を付与することを考えました.これまでに,ナノサイズ半球型ホスフィン,デンドリマー部位を有するホスフィンや含窒素複素環カルベン,エチレングリコール鎖を導入したホスフィン,カリックスアレーン部位を有するホスフィンなど数々のオリジナル配位子を開発してきました.これらをパラジウムやロジウムを用いる触媒反応に適用すると,それぞれの配位子がもつユニークな構造的特徴が反応性や選択性に強く反映されました.

テーマ1


最近の研究成果

半球型ホスフィン配位子を用いた銅触媒の開発

Angew. Chem. Int. Ed., 49, 1472-1476 (2010).

    

          

半球型ホスフィン (BSP) を銅触媒を用いたケトンのヒドロシリル化反応に適応しました。BSPを有する触媒系はこれまでに困難であったかさ高いケトンのヒドロシリル化において高い触媒活性を示しました。さらに、本触媒系は基質の立体障害が大きくなるほど反応が加速されるという非常に興味深い反応性を示し、アルデヒド共存下においてもケトンを優先的に還元することができます。

分子周辺部にテトラエチレングリコール鎖を導入したデンドリマーホスフィン配位子の開発

Angew. Chem. Int. Ed., 47, 8310-8314 (2008).

    

          

分子周辺部に複数のテトラエチレングリコール(TEG)鎖を導入したデンドリマー型のホスフィン配位子を設計し、合成しました。活性化の困難なクロロベンゼン類を基質とする鈴木‐宮浦反応へと適用した結果、配位子上に導入されたTEG鎖により、非常に効果的に反応が進行することを明らかにしました。また、デンドリマー部位の世代拡張に伴って、より顕著な活性化効果が得られました。

長鎖親水基と長鎖疎水基をもつ含窒素ヘテロ環カルベン配位子の開発と触媒性能

Dalton Trans., 379-385 (2008).

長鎖親水基(テトラエチレングリコール鎖)と長鎖疎水基(C12アルキル鎖)を導入した含窒素複素環カルベン(NHC)を開発し、これをパラジウムを触媒とする鈴木−宮浦カップリング反応に適用しました。 その結果、長鎖親水基を組み込んだ触媒が極めて効果的に機能することが分かりました。

柔軟なポリベンジルエーテルデンドリマーを有するロジウム錯体

Dalton Trans., 1567-1569 (2007).

架橋型配位構造をとる含窒素複素環カルベン(NHC)配位子を設計し、これらを有するロジウム(III)錯体の合成ならびに同定を行いました。 デンドリマーの世代が向上すると1H NMRのシグナルがシフトすることがわかりました。 計算により最適化した構造から、デンドリマーの鎖が中心部分を覆い囲む構造をとることがわかりました。

クロロベンゼン類を用いた鈴木-宮浦カップリングにおける半球型ナノホスフィン配位子の深さの効果

Org. Lett, 7, 89-92 (2007).

極めてユニークな構造を有する半球型ナノサイズホスフィン配位子が、反応性が低く活性化が困難なクロロベンゼン類の鈴木-宮浦カップリングに有効であることを見出しました。 さらに本反応では、半球が大きく深い配位子ほど高い活性が得られることがわかりました。これは、配位子の”分子の形”が触媒活性に影響を与えた例として、極めて重要な意味を持ちます。

剛直なデンドリマーを組み込んだ含窒素へテロ環カルベン配位子の開発と触媒反応への利用

Chem. Commun, 269-271 (2007).

2,3,4,5-テトラフェニルフェニル基を基本骨格とする剛直なデンドリマーを組み込んだ含窒素へテロ環カルベン配位子をデザインし、これらを有するロジウム(I)錯体を合成しました。X線結晶構造解析ならびに理論計算を用いることで、合成した錯体の分子構造を明らかにしました。 これらを用いて共役エノンのヒドロシリル化反応を行ったところ、剛直なデンドリマーを有する触媒では反応の選択性が逆転することを見出しました。

テトラフェニルフェニル基を有するホスフィン配位子の開発とパラジウム触媒反応における顕著な効果

Organometallics,25, 4665-4669 (2006).

2,3,4,5-テトラフェニルフェニル基をリン上に導入したホスフィン配位子をデザインし、合成しました。 上記配位子は、より活性の低いクロロベンゼン類の鈴木−宮浦カップリングにおいて極めて有用であることを見出しました。 また、溝呂木−Heck反応、ジシランを用いるシリル化反応においても、この配位子は際立った有効性を示しました。 配位部位であるリン原子がテトラフェニルフェニル基の方向にせり出した構造が、高い触媒活性を示すモノホスフィンパラジウム種を安定化していると考えられます。 この結果、不活性なクロロベンゼン類を極めて効率よく活性化することに成功しました。

[6]カリックスアレーンホスフィン配位子の合成と触媒性能

Eur. J. Inorg. Chem, 222-230 (2006).

特徴的な空孔を有するカリックス[6]アレーンホスフィン配位子をデザイン、合成を行いました。 2次元NMRの測定を駆使することにより、溶液内での安定構造の情報を得ることができました。 固体状態の構造に関しては、固体NMRならびにX線結晶構造解析により明らかにしました。 このカリックス部位の安定構造に関しては、理論計算による解析も行いました。 また、これらホスフィン配位子が、ロジウムを触媒とするヒドロホルミル化反応の有用な配位子として機能することも明らかにしました。

ナノサイズデンドリマーを有する含窒素ヘテロ環カルベン配位子の開発

Chem. Commun., 4526-4528 (2005).

含窒素へテロ環カルベンを配位子とする柔軟なデンドリマー分子触媒の開発を行いました。 これら一連の配位子を有するロジウム錯体を合成し、ケトンのヒドロシリル化反応を行いました。 我々は、分岐の数が多いより大きなデンドリマーを用いると反応がより効率よく進行するという、極めて興味深い「正のデンドリマー効果」を見出しました。 これは、我々が目指すナノサイズ分子触媒の開発において、大変重要な指針となります。

MALDI-TOF-MS法によるパラジウム凝集の直接観察

Org. Lett., 7, 4677-4679 (2005)

これまで、均一系分子触媒における中心金属の会合、オリゴマー化、金属黒の析出過程に関する研究はほとんどありませんでした。 我々は、上図のような配位子を有するパラジウム錯体を加熱して生じるパラジウムオリゴマーをMALDI-TOF-MSにより分析することに成功しました。 テトラフェニルフェニル基を有する錯体と無置換のピリジン錯体を比較した場合、オリゴマーの生成が顕著に抑制されます。 この配位子効果は、アルコールの空気酸化反応におけるパラジウム黒の抑制効果と同じでした。

分子認識能を有するナノカプセル錯体の合成

Organometallics, 24, 4-6 (2005).

カリックス[6]アレーン部位にホスフィン配位部位を3つ導入した極めてユニークなホスフィン配位子を設計、合成しました。 これら配位子は、イリジウムならびにロジウムと容易に錯形成し、上図のようなナノサイズカプセル型錯体を与えることを明らかにしました。 溶液内での挙動をNMRを用いて詳細に解析した結果、このカプセル錯体が均一系有機溶媒中において、共存する分子を認識することを見出しました。

 

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